遺言

 相続方法には、遺言に従うか、遺産分割協議で決めるか、相続放棄などがあります。
 それを検討するためには、3ヶ月以内に、相続人の確定及び遺産総額の把握が必要です。

遺言

1. 遺言の方式と効果

遺言とその方式

 遺言とは人が自己の死後の法律関係を定めるために行う要式の単独行為であり、遺言によって、死後の財産処分をも自由にすることができます。

 相続人は、原則、いつでも協議で遺産の全部または一部の分割ができます(民法907条:遺産分割自由の原則)が、遺言による遺産分割方法の指定など下表のものについては遺言内容を守らなければいけません。

遺言の内、厳守事項内容
遺産分割方法の指定いわゆる特定財産承継遺言として「甲不動産は長男Aに相続させ、乙不動産は二男に相続させる」趣旨の遺言がある場合、
相続人間で遺産分割協議など何らの行為を要せず、特定財産を特定された者が遺言者の死亡の時に直ちに取得する(最判3.4.19)
→相続人間で改めて遺産分割を行うことはできません。
遺産分割の禁止期間遺言者は遺言で5年を超えない期間、遺産分割を禁止することができる(民法908条) ※特定の遺産または全体に対してできる
→この禁止期間、相続人全員が合意しても遺産分割をすることはできません。
遺言執行者の指定遺言者は遺言で遺言執行者を指定することができる(民法1006条) ※1人でも複数でも良い
→指定者に承諾義務は無いが、相続人等から相当期間を定めて承諾するか催告がなされたにもかかわらず確答しないと、
 承諾したものとみなされます(民法1008条)
遺産分割の方法には①現物分割、②換価分割(代金分割)、③代償分割(価格賠償)、④これらの組み合わせがあるが、遺言ではより具体的に個々の相続財産の帰属の指定がなされることが多い。

 遺言も法律行為である以上、意思能力が必要であり、民法は15歳を遺言能力の取得時期と定めています(民法961条)。
 また、遺言は厳格な要式行為とされており、法律に定める方式に従うことが要求されています(民法960条)。

 遺言の方式は、大きく分けると普通の方式と特別の方式(応急時遺言、隔絶地遺言)がありますが、一般的である普通の方式のみを紹介します。 

普通の方式証人・立会人筆者署名・捺印日付その他
自筆証書遺言(民法968条)不要本人本人年月日検認が必要※
公正証書遺言(民法969条)証人2人以上の立会公証人本人・証人・公証人年月日検認不要
秘密証書遺言(民法970条)公証人1人及び証人2人以上の前に提出誰でもよい
(自筆が望ましい)
本人
封紙には本人・証人・公証人
年月日検認が必要
※検認の手続きは1ヶ月くらいかかります。なお、遺言保管制度を用いて法務局で保管されている場合は検認不要です。

①自筆証書遺言 

 自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、これに押印することにより成立するものです。最も簡便な方式で、証人の立会も不要であるため、秘密にしておくできますが、紛失防止などに注意が必要です。ワープロなどの機械を用いたもの、代筆されたものも無効です。

 遺言に添付する財産目録については自書でなくてもいいですが、偽造防止の観点から、目録は1ページごとに署名押印をしなければいけません。
 日付の自書について、「年月」だけでなく「日」も特定するような記載でなければ、遺言は無効です。たとえば、「満何歳の誕生日」の記載であれば大丈夫ですが、「平成何年何月吉日」という記載では無効です。他の証拠から日が明らかになっても、「年月」だけの表示では無効となるため注意が必要です。
 氏名の自書について、氏又は名の一方だけ、ペンネームや通称などの記載であっても、遺言者を特定できる場合には遺言は有効です。また、捺印について、実印、認印、拇印その他の指印いずれも有効です。シャチハタや花押(昔のサインのようなもの)では無効です。
 また、遺言は1人でする必要があり、2人以上の者が同一の証書ですること(共同遺言)はできません(民法975条)。ただし、一方の遺言書と他方の遺言書を容易に切り離すことができる場合には、共同遺言には当たらず、有効です。
 さらに、「添え手」について、病気その他の理由により、運筆を他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、以下の要件を満たし筆跡の上で判定できる場合には有効とされています(最判昭62.10.8)。 

添え手による自筆が認められる要件
①遺言者が証書作成時に自書能力を有していること
②遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること
③添え手をした他人の意思が介入した形跡の無いこと

②公正証書遺言

 公正証書遺言は、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記するものです。煩雑で費用がかかり、秘密保持も難しいデメリットがある反面、原本が公証役場で保管されるため、紛失・改変のおそれが無く、相続開始後の検認も不要であるというメリットがあります(民法1004条2項)。

 公正証書によって遺言するには、次の方式による必要があります(民法969条)。

公正証書遺言の方式
①証人2人以上の立会いがあること
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は、閲覧させること
④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。
 ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記し、署名に代えることができる。
⑤公証人が、その証書を上記①から④に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
※遺言者が言語障害者・聴覚障害者である場合に関する特則があり、口授を手話や自書等に代えること、読み聞かせを手話等に代えることとされます(民法969条の2)。
※証人の立会いの無いものは無効です。

③秘密証書遺言

 秘密証書遺言は、遺言者が署名捺印した書面を封印し、公証人及び証人に自己の遺言書である旨を申述等した後、遺言者自身で保管するものです。
 秘密証書遺言によって遺言するには、次の方式による必要があります(民法970条)。

秘密証書遺言の方式
①遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと
②遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
③遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言者である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
④公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと
※遺言者が言語障害者に関する特則があり、口授を手話や自書等に代えることとされます(民法972条)。
※この方式違反がある場合でも、自筆証書遺言の方式を備えたものであるときは、自筆証書遺言としての効力が認められます(民法971条)。

遺言の効果

 遺言は、原則、遺言者が死亡した時にその効力が生じます(民法985条1項)。停止条件付遺言である場合には、遺言者の死亡した後、条件が成就したときに効力が生じます(民法985条2項)。
 遺言により、法定相続分とは違う割合で相続をさせたり(指定相続)、相続人以外に財産を遺したり(遺贈)、遺言を実現させる者(遺言執行者)を指定することができます。遺言でできる代表的な事項は下表のとおりです。

遺言でできること根拠条文
認知民法781条2項
推定相続人の廃除・廃除の取消し民法893条、894条2項
祭祀財産の承継者の指定民法897条1項
相続分の指定・指定の委託民法902条
遺産分割方法の指定・遺産の分割の禁止民法908条
遺贈民法964条
遺言執行者の指定・指定の委託民法1006条

2. 遺贈とは

遺贈

 遺贈は、遺言により無償で財産を与えることです。
 遺贈は単独行為であり、遺言の方式によります。死因贈与は契約であり、遺言ではできないという点で異なります。

区分遺贈(民法985条ほか)死因贈与(民法554条)
法的性質単独行為契約
能力15歳以上の意思能力者ができる贈与者に行為能力が必要
代理不可可能
方式遺言の方式による不要式
負担付可能同左
放棄できるできない
遺留分侵害額請求対象となる同左
※死因贈与は、遺言者の生前、遺言者と受遺者がなした契約により効果が生じるものであるため、合意解除等が無い限り当事者はこれに拘束され、放棄できません。

 遺贈には、受遺者に特定の財産を与える「特定遺贈」、遺産の全部又は一部の分数的割合を与える「包括遺贈」の2つがあり、下表の違いがあります。

区分特定遺贈包括遺贈
意義特定の財産を与える遺贈遺産の全部又は一定の割合で示した部分を与える遺贈
具体例「友人Aに甲土地を遺贈する」
「長男Bに乙土地を遺贈する」
「友人Aに一切の財産を遺贈する」
「内縁の妻Cに全財産の2分の1を遺贈する」・・①
効果遺言の効力発生時(遺言者死亡時)、遺贈目的物の所有権が受遺者に移転する包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)
遺言分割協議に参加できる
上記①の場合、包括受遺者Cは権利・義務を2分の1の割合で承継する
放棄遺言者死亡後いつでも(民法986条)遺言者死亡後(知ってから)、原則3ヶ月以内(民法915条)
※特定遺贈の目的物が不動産である場合、受遺者がその登記をしておかないと権利の取得を第三者に対抗することができません。

負担付遺贈

 遺言者は受遺者に対して、単純な遺贈をすることだけでなく、遺言において、受遺者に一定の給付をなすべき義務を負わせることもできます。
 負担付遺贈は、特定遺贈・包括遺贈のどちらについても認められ、停止条件付遺贈とは異なり、受遺者が負担を履行する前であっても遺贈の効力は生じます。
 負担の内容についてとくに制限はありませんが、受遺者が過度の不利益を負わないよう、遺贈の目的を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負うものとされています(民法1002条1項)。

 受遺者が負担した義務を履行しないときは、相続人又は遺言執行者は、履行の強制をすることができる(民法414条)ほか、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法1027条)。
 取消の審判が確定すると、遺贈は遡及的に効力を失い、その目的財産は原則として相続人に帰属します(民法995条)。

3.遺言検索及び検認

遺言検索

 遺言書があればそれに従うことが原則となるため、亡くなった人が作成した遺言書の有無を調べます。→「遺言書を探す」はこちらも参照
 遺言書の原本について、自筆証書遺言は法務局、公正証書遺言は公証役場に保管されているため、自宅になければ法務局又は公証役場で調べることができます。

自筆証書遺言の検索方法内容
手続きを行う場所最寄りの法務局
手続きできる人相続人、相続人の法定代理人など
必要なもの遺言者の死亡及び手続きを行う方が相続人であることが確認できる戸籍謄本
本人確認書類 (運転免許証、マイナンバーカード等)
法定代理人の場合 戸籍謄本(親権者)又は登記事項証明書(成年後見人等)/3ヶ月以内のもの など
手数料遺言書保管事実証明書の交付請求:800円/1枚
遺言書情報証明書の交付請求:1,400円/1枚
※閲覧・謄本の請求は作成した公証役場でのみ可能
公正証書遺言の検索方法内容
手続きを行う場所最寄りの公証役場
手続きできる人相続人、相続人の代理人など
必要なもの遺言者の死亡及び手続きを行う方が相続人であることが確認できる戸籍謄本
本人確認書類 (運転免許証、マイナンバーカード等)
印鑑証明書/3ヶ月以内のもの及び実印
代理人の場合 委任状 など
手数料検索は無料
閲覧は200円/1回、謄本は250円/1枚
※閲覧・謄本の請求は作成した公証役場でのみ可能

検認

 検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状や状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。

 検認手続きは、下表の左から右へ流れで、おおよそ1ヶ月要します。

検認の申立て家庭裁判所から相続人に検認期日通知家庭裁判所で相続人が立会い開封・検認検認済証明書申請・検認済証明書付の遺言書を受領
※自筆証書遺言で、法務局の遺言書保管制度を利用し「遺言書情報証明書」を入手すれば検認手続きは不要です。

 遺言開封前に検認手続きを受ける必要があり、その申立方法は下表のとおりです。

遺言書の検認の申立方法内容
検認が必要な遺言公正証書遺言以外に遺言
申立人遺言書の保管者、遺言書を発見した相続人
申立先遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
必要なもの申立書 (裁判所の窓口か、ホームページから入手)
相続関係を証する戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本一式
手数料収入印紙800円分、連絡用の郵便切手
※遺言書を検認当日に持参するのが一般的です。封されている場合、開封しないようにしましょう。
※検認後、「検認済証明書」の交付を受けます。

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