相続手続きに税理士は必要か?

1. 相続手続きに税理士は必要か?依頼しなくて良い場合もある

相続が発生すると、相続人(遺産を相続した人)は相続税を納めなければいけませんが、そのときに税理士の力は必ずしも必要というわけではありません。相続人自身が相続税を計算して申告することも可能です。しかし、申告するには、すべての相続財産や債務などを漏れなく把握し、計算する必要があります。この手続きは非常に複雑で、具体的に何をすれば良いのかわからず時間や労力を必要以上にかけてしまったり、頑張って書類を作成したものの不備があったり、特例適用漏れがあって数百万円も過大に納税していたケースも少なくありません(過大納付であっても税務署は連絡してくれません)。
税理士の力を借りると申告にかかる手間や時間が省けるメリットがあります。

一方、税理士に依頼しなくても良いケースがあります。
例えば、相続財産が明らかに基礎控除を下回っているときは相続税申告が必要ないため、税理士に依頼しなくても問題ないでしょう。相続における基礎控除は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」です。

ただし、本人が基礎控除を下回っていると思っていても、実際は超えている場合もないわけではありません。そのまま放って置くと無申告になり、後に延滞税が発生するリスクがあるため、少しでも不安がある場合は早めに税理士に相談したほうが無難です。→延滞税・加算税はこちら

2. 相続で税理士に依頼するメリット

相続で税理士に依頼する必要は必ずしもありませんが、依頼するとさまざまなメリットが得られます。

2-1. 相続税の申告がスムーズ

税理士に依頼するメリットとして、まず相続税の申告がスムーズにできることが挙げられます。
もし相続人が自分で申告するとなると、複雑な相続税の計算や申告書類の作成をすべて行う必要があります。相続税の申告・納税は相続が発生してから10カ月以内に行わなければなりません。もし、期限に遅れた場合は、ペナルティとして延滞税が発生します。被相続人(亡くなった人)が亡くなるまでには介護や看護があり、亡くなったあとは葬儀もありで、やっと一息つけるのは大体四十九日を終えてから。そこでようやく、相続税申告に必要な遺産分割の話し合いを始める人が多く見られます。申告・納税期間は10カ月ですが、それよりも短い期間で準備せざるを得なくなっている人が少なくないのが実情です。

短い期間で、慣れない相続税の計算・申告書類の作成を正しく行うのはとても大変なことです。しかし、税理士に依頼するとスムーズに申告ができます。万一、申告後に新たな財産が見つかった場合でも、安心して対応を任せることができます。また、申告後に税務調査が入ったとしても、税理士がついていれば代わりに対応をお願いすることが可能です(基本的には追加料金を払う必要あります)。

2-2. 特例適用による節税をしてもらえる

特例などを適用して、財産の評価額を下げ、節税につなげてもらえるのも税理士に依頼するメリットです。
相続税は個々の財産を評価して評価額を出し、税金を計算します。このため、評価額をできるだけ引き下げられれば節税することが可能です。この評価額を下げる方法の一つが「特例適用」です。特例には、自宅の土地の評価額が8割引きになる「小規模宅地等の特例」、相続人が配偶者の場合に最高1億6,000万円(または配偶者の法定相続分相当額とのいずれか多い金額)まで相続税がかからない「配偶者の税額軽減」などがあります。
このような特例を受けるためには、法律で決められた細かい条件に合っているかどうかの判断が不可欠ですが、税理士に依頼すれば条件の確認から判断・申告までサポートしてもらえます。

2-3. 二次相続対策をしてもらえる

税理士に依頼すると、相続税申告の際に、二次相続対策を合わせて行うことができます。
二次相続とは、被相続人から財産を相続した人が亡くなったときに発生する相続のことです。夫・妻・長男・長女の4人家族の場合で、仮に夫が亡くなり、その後妻が亡くなったとしたら、夫が亡くなった最初の相続が一次相続、次の妻の相続が二次相続となります。相続税では、一次相続の申告の際に、二次相続のことも合わせて考えることが大切です。なぜなら、一次相続で税金がかからなかったとしても、二次相続で思わぬ税金がかかる場合があるためです。

例えば、一次相続で節税する方法の一つに、配偶者である妻が「配偶者の税額軽減」の適用を最大限に活用する方法があります。一般に、妻が相続した財産が1億6,000万円以下の場合、配偶者の税額軽減を適用すると相続税がかかりません。しかし、一次相続で妻が相続した財産のうち妻が亡くなったときに残っている財産は、妻独自の財産とともに次の相続(二次相続)の課税対象となります。その結果、一次相続と二次相続のトータルの相続税がかえって多くなる場合があります。特に、妻独自の財産だけで基礎控除を超えるような場合には注意が必要です。

こうした事態を避ける方法として、夫と妻と同居している長男が跡継ぎで、いずれ自宅を相続するときは、一次相続の時点で長男が自宅を相続することがあります。この場合、自宅の評価額によっては一次相続で相続税を支払うものの自宅は長男所有になるため、二次相続で相続税が課税されません。

税理士に依頼すると、このような二次相続におけるリスクの把握と対策ができるようになります。

2-4. 相続手続きは相続税申告だけではない!

相続において、相続税申告だけではなく、土地・建物などの不動産の相続登記や金融資産の名義変更等が必要です。
また、相続トラブルでもめたとき遺産分割の話合いは弁護士、測量や未登記の不動産は土地家屋調査士への依頼が必要です。

相続手続きでは、税理士だけでなく、弁護士、司法書士、土地家屋調査士等の各専門家が必要です。
項目弁護士税理士司法書士土地家屋調査士
相続全般の相談
相続税対策の相談〇※
相続財産の評価〇※
遺言書の作成指導
測量、未登記不動産の登記
相続登記
相続税申告書作成〇※
相続争いがある場合
相続放棄等の手続き
金融資産の名義変更
※弁護士は税理士登録をすれば税理士業を行うことができるがあまりやらない。また、弁護士は相続登記を行うこともできるがあまりやらない。

専門家に依頼すると、他の専門家を紹介してくれることがあり、自分で探す手間を省けます。承諾を得たうえで、必要な書類を直接共有するので、よりスムーズに専門家の力を借りることが可能です。

3. 相続で税理士に依頼したほうが良いケース

相続手続きで税理士に依頼した方が良いケースは、以下のような場合です。

3-1. 相続財産が基礎控除を超える場合

相続財産が「基礎控除 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」を超える場合、相続税の申告が必要です。すべての財産を漏れなく申告しなければなりませんが、不動産の評価など複雑なものや特例の判断が難しいケースがあり、慣れていない場合には申告を誤りやすい可能性があるため、税理士に依頼した方がよいでしょう。

3-2. 基礎控除を超えるかわからない場合

基礎控除を超えるかわからずに、そのまま放って置くと、もし財産が漏れていたり少なく計算されていたりすると、申告期限に間に合わず延滞税など余計に税金を支払うことになりかねません。税理士に依頼すれば、相続財産をきちんと把握してもらえます。特に自分で計算したところ、基礎控除額ギリギリだった場合は、税理士に依頼した方が安心です。

3-3. はじめての相続で税金の計算や申告書の作成などが難しい場合

相続税の計算や申告書の作成は、時間や手間の負担が大きく、初めての人には難しいものです。特例など適用できるかどうかの判断もしなければなりません。適切な特例を使って節税しつつも、きちんと相続税の申告・納付をするためには、税理士に依頼した方が確実でしょう。

財産評価誤りや特例適用漏れなど、苦労したにもかかわらず、結果的に税理士に依頼した方が納税額が安くなるケースがある。

4. 相続で税理士に依頼しなくても良いケース

相続で税理士に依頼しなくても良いケースは、以下のような場合です。

4-1. 相続税がかからないことが確実な場合

相続財産の合計が、基礎控除以下であることが明確にわかり、相続税がかからないことが確実であれば、税理士に相談せずとも通常トラブルは起きないでしょう。このほか、次の条件をすべて満たす場合は依頼をしなくても申告できるでしょう。

  • 相続財産が預貯金のみ、あるいは預貯金と死亡保険金程度である(不動産など評価が難しい財産がない)
  • 全財産もれなく把握できている
  • 相続人全員で円満に遺産分割協議ができている
  • 税金の計算や書類の作成などに苦手意識がない

自力で申告をする場合は、時間と手間がある程度かかること、期限間近に税理士へ依頼すると特急料金が加算されること等留意する必要があります。

5. 相続に強い税理士を見極めるポイント

上記の方法で探した税理士の中から、実際に依頼する税理士を決めるときには、良い税理士かどうか見極めるための視点が必要です。

5-1. 相続専門という看板を掲げているか

医者に専門がある様に、税理士にも専門があります。医者を選ぶ時と同様、税理士を選ぶ時も全く同じで、税理士にも各自の得意分野があります
税法は細かい部分が毎年変わります。例えば、これまで使えていた特例の条件が厳しくなったり、使いやすくなったり、これまで見逃されていた節税ルールが締め付けられたり、思っている以上に変化があります。すべての税法の細かい改正ポイントを広く押さえて、実務に正しく反映することはとても出来ません。

相続のお悩みの場合:
相続税の最新の税法を勉強して実務に反映している『相続専門の税理士』に依頼

法人税のお悩みの場合:
法人税の最新の税法を勉強して実務に反映している『法人専門の税理士』に依頼

もし事務所のホームページや看板に「所得対応・法人対応・相続対応!何でも出来ます!」とアピールされている税理士事務所がありましたら、少し注意深くリサーチしてみて下さい。

5-2. 相続税申告の実績は豊富か

まずは「相続税申告」の実績が豊富であるかどうかです。相続は、財産や家族構成などが同じようであっても、一つとして同じものはありません。そこで生きるのが実績や経験ですが、税理士によってさまざまです。相続案件が苦手で積極的に引き受けていない税理士もいます。相続税申告の実績が豊富か確認するには、初回の相談時に手続きに関するアドバイスがわかりやすいか、こちらの質問に的確に回答してくれるか、などを見ると良いでしょう。

5-3. 二次相続までふまえた遺産分割のアドバイスをしてくれるか

次に、二次相続までふまえた遺産分割のアドバイスをしてくれるかどうかです。相続税申告では、二次相続まで視野に入れた検討が欠かせません。前述したように一次相続における節税策が、二次相続を視野に入れると、必ずしも得策でない場合がありえます。こうした点ももらさずに伝えてくれる税理士かどうか見ることも重要です。

5-4. 税理士報酬は明瞭か

税理士報酬が明瞭かどうかも確認しましょう。何にいくら払うのかわからないのは、トラブルのもとになり得ます。見積書を出してもらい、金額の詳細を相場とかけ離れていないかと合わせて事前にチェックすることが大切です。

5-5. 相続人の不安に寄り添ってくれるか

自分の不安に寄り添ってくれるかも大切なポイントです。長い人生でも、相続はめったにあるものではありません。特に初めての相続であれば、わからないことばかり、というのは普通のことです。相続に強い税理士は、そうした事情をよく知っていますので、相談したときに自分の不安に寄り添ってくれているか、わからないことに対して丁寧に対応してくれているかを確認することも、税理士を見極めるときの大切なポイントです。
大手税理士法人の場合、当初面談だけベテラン税理士が出て、あとのやり取りや実際の書類作成は無資格者が行うということがあります。また、人の入れ替えも多く、申告書提出は知らない税理士が行ったということもありえます。出来れば、近くの税理士事務所で寄り添ってくれる人が良いでしょう。

6. 税理士に依頼するときの報酬の目安

相続税申告の場合、「遺産総額の1%程度」の事務所が多く見受けられます(初回相談無料のところが大半です)。

ただし、不動産が多い、複雑な財産調査が必要などで追加の料金がかかる場合があります。また、申告作業の過程で、依頼時にはわからなかった預金や株式などの財産が新たに見つかることもあり、財産が増えて報酬が変更になる場合もあります。そのため、事前に概算でも見積書を出してもらい、もし追加の料金が発生する場合には説明の時期やおおよその金額を提示しておいてもらうと良いでしょう。

7. まとめ

相続で税理士に依頼するメリットは、一言で言えば「安心感」です。確実に申告でき、かつ、不安に寄り添う相談相手となってくれます。

いざ相続が起こると、「手続きが大変で……」と悩む人は少なくありません。特に初めての相続で何をいつまでにすべきかわからず困った、相続税の申告が必要だと気づかず期限を過ぎてしまった、という人も時折見られます。相続が発生してからすべての手続きが終わる名義変更まで、早くて半年から1年ほどかかりますが、争いやトラブルなく、スムーズに完了できれば心身の負担は格段に減ります。その円滑なサポート役となるのが税理士や司法書士です。

一つでも多くの相続が、円満に完了することを心より願っています。

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