相続不動産を共有にしても大丈夫?
【ケース】
亡くなった父が保有していた自宅の相続をめぐり、長男、次男、長女の3人で協議したのですが、もともと仲の良いとは言えず、折り合いがつきませんでした。仕方なく、3人の共有で相続したのですが、この先、大きなトラブルにならないか心配です。

不動産を相続した際、「しばらくは何もすることもないから」と相続した不動産を共有にするのは何も問題がなさそうに見えます。しかし、不動産を共有にするデメリットはいくつもあります。
不動産の共有は制限が多い
相続した不動産を売りたいと思った場合、単独で所有していれば自分の意思で自由に売ることができます。しかし、共有している不動産の場合、共有者全員の同意が必要になるので、自分だけの意思では売ることができません。ほかの共有者がひとりでも「売りたくない」と言ったら売ることができなくなります。
売却以外にも、共有名義の不動産の場合、共有者の1人が勝手に管理や変更を行うことはできません。共有者の不動産に対する行為には、以下の制限があります。行為によって単独でできたり、一定数の承認が必要となったりしますので注意が必要です。

保存行為(民法252条5項)
保存行為とは、雨漏りの修理や庭の手入れなど、不動産の現状維持のための行為です。この保存行為は、共有者1人でも行っても問題ありません。むしろ、建物の保存には必要なことですからほかの人にとっても利益になることです。このような行為は単独で行ってもかまいません。
管理行為(民法252条1項前段)
「短期間の」賃貸借や部分的なリフォームなど、簡易的で全体としての不動産の価値は変わらない程度の行為とされ、共有持ち分の過半数(共有者の人数の過半数ではありません)の同意があれば可能となります。この場合の「短期間の」とは、建物は3年以内、土地は5年以内の契約のことですが、期間内であっても借地借家法が適用される場合は、管理行為の範囲から超えてしまいます。
※借地借家法が適用されない場合:「一時使用目的の建物賃貸借契約」「無料で貸し借りする契約」「1992年8月1日より前に締結された建物賃貸借契約」
変更行為(民法251条1項)
借地借家法が適用される一般的な賃貸借契約、大規模なリフォーム、売却などは変更行為となります。これらの変更行為は、共有者全員の利益に影響するため、共有者全員の同意が必要となります。
不動産の共有は避ける
遺産分割のときに相続人であるお子様が3人いる場合、「均等に分けてあげたい」と思うのが親心でしょう。しかし、不動産はお金のように分けることができない上に、分筆しようとしても正確に分割することも難しく、それなりの費用がかかります。結果、「2人で持っていなさい」「全員で持って(共有として)いなさい」となってしまうケースが多いようです。たしかにそのほうが平等感はあるかもしれません。しかし、上記の「変更行為」にあたる行為や売却を考えた際に全員の同意がなければ行うことができないという大きなデメリットがあるわけです。
また、このケースの場合、もし共有している人の1人が亡くなってしまったらその亡くなった人の相続人(妻、子ども等)が共有することになってしまい、さらに状況は複雑になっていきます。
できるだけ、不動産を共有することは避けるべきです。仮に、いまは兄弟姉妹どうしの仲が良かったとしても、先のことはわかりません。それぞれの家庭の状況も変わってくるでしょうし、土地に対する考えも変わっていきます。土地に対して大きな意思決定をする際、共有者の同意が必要となるのはデメリットにしかならないでしょう。収益物件の按分については、収入だけでなくそれにかかる借入金や利子そのほかの費用も按分しなければなりません。不動産の共有には大きな問題があとからついてくるものなのです。
不動産の共有を解消する

相続不動産の共有を解消するには、お互いの持ち分について何らかの処理をしなければなりません。二次相続のトラブル防止にもつながることであり、理解しておいてください。
●保存持分を売却又は買い取る
共有不動産の持ち分は他の共有者や第三者に売却することが可能です。たとえば、兄弟姉妹3人が3分の1ずつ共有している場合、次男が長男へ持ち分を売却すれば、長男の持ち分が3分の2、長女の持ち分が3分の1となります。持ち分は何分割しても問題ありませんので、次男は6分の1ずつを長男と長女へ売却することも可能です。そうすれば、長男と長女が2分の1ずつ保有することになります。第三者への売却は共有を解消することになりませんので注意してください。
持ち分は売却することもできますが、逆に、ほかの人の持ち分を買い取ることもできます。たとえば、このケースで、長男は次男、長女から、彼らの持ち分をすべて買い取ることもできます。
●持ち分を放棄
自分の持ち分を放棄することも可能です。金銭的なメリットはありませんが、すでに購入した自宅があったり、将来ほかの人に使ってもらいたいと考える人には適した方法です。ほかの共有者から見れば、贈与税の対象となる可能性があり、固定資産税の負担も増えるため了承されないケースもあるかもしれませんが、共有解消のひとつの方法となります。また、持ち分放棄であれば遺産の相続放棄とは異なり不動産の共有持ち分以外の財産を相続することができます。
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