遺留分侵害額請求(遺言書のトラブル)

遺留分侵害額請求とは?(民法1046条)

共同相続と遺産の共有

相続人が2人以上いる場合を共同相続と呼びます。基本的に遺言書の内容を優先しますが、遺言書が無い場合には遺産はいったん下記の法定相続分をもって相続人全員の共有に属し、遺産分割の手続きを経て、各相続人に帰属することになります。(民法906条など)
相続人が2人以上いるにもかかわらず、そのうちの1人にほぼすべての財産を相続させる、又は、友人の1人にすべてを遺贈する遺言を遺していた場合、他の相続人は財産を受け取ることができなくなってしまいます。このような事態を防ぐため、相続人が取得する財産の金額が遺留分を下回る場合、財産を取得した者に対して遺留分を取り戻すよう金銭を請求できる権利が「遺留分侵害額請求権」です。
この遺留分とは、遺言の内容にかかわらず法定相続人に保障されている最低限取得できる財産の割合です。

法定相続分 (民法900条など)

民法において、相続人の範囲(民法887条など)※のほか、「法定相続分」が定められています。※「民法上」と「相続税法上」の相続人についての簡記はこちら
「法定相続分」は、相続人が相続する遺産の総額に対する分数割合(相続分率)で、相続税の計算や遺留分請求の基準となります。遺言が無い場合、相続人による遺産分割協議でその分割割合を決めることとなりますが、「法定相続分」が1つの目安となります。

遺留分 (民法1042条など)

前述のとおり、遺言があった場合、上記の「法定相続分」に関係無く、亡くなった方(被相続人)の意志で遺産の分け方を指定できます。
極端な例として、妻や子どもがいる被相続人が愛人にすべての遺産をあげるとの遺言を遺した場合を考えてください。互いに協力して財産を築いてきた妻や血が繋がった子どもに一切の遺産を遺さないのは行き過ぎではないでしょうか。そこで、被相続人による財産処分の自由を認めつつも、相続人の生活の安定・財産の公平な分配を調整するため、「遺留分」制度が定められています。

遺言で「遺留分」を侵害された場合、侵害された額を「金銭」※で請求できます
※2018年(平成30年)民法改正により、2019年(令和元年)7月1日施行分より「金銭」で請求できるようになりました。
この「遺留分」を請求できるのは、相続人が配偶者、第1順位の直系卑属(子、孫など)、第2順位の直系尊属(父母、祖父母など)である場合であり、その「遺留分」は原則として「法定相続分」の2分の1です。なお、第3順位の兄弟姉妹には「遺留分」がありません。

相続人(民法887条など)法定相続分(民法900条など)遺留分(民法1042条など)
配偶者と第1順位の直系卑属(子、孫など)配偶者が1/2
直系卑属が1/2
※直系卑属が複数いる場合は、1/2を均等割
※配偶者がいない場合は、直系卑属だけで均等割
直系卑属の「法定相続分」×1/2
配偶者と第2順位の直系尊属(父母、祖父母など)配偶者が2/3
直系尊属が1/3
直系尊属の「法定相続分」×1/3※
※直系尊属のみが相続人の場合(それ以外は1/2)
配偶者と第3順位の兄弟姉妹配偶者が3/4
兄弟姉妹が1/4
※兄弟姉妹が複数いる場合は、1/4を均等割
兄弟姉妹に遺留分は無い
※配偶者の法定相続分が多いのは遺された配偶者の生活を守るためであり、遺産分割協議においても同様の配慮は大切です。

第3順位の兄弟姉妹が相続人となるケースで、配偶者にすべての遺産を相続させたい場合、遺言でその旨を遺しておくことが大切です。
兄弟姉妹には「遺留分」が無いため、配偶者にすべての遺産を引き継ぐことができます。

請求ができる人(民法1042条)

請求ができる人は、遺留分を侵害された相続人またはその承継人です。配偶者は常に相続人であり、それ以外の相続人には相続できる優先順位があります。

第1順位…直系卑属(子、孫)※子が死亡していた場合には孫
第2順位…直系尊属(父母、祖父母)※父母が死亡していた場合には祖父母

相続人が配偶者、第1順位の直系卑属(子、孫など)、第2順位の直系尊属(父母、祖父母など)である場合です。第3順位である兄弟姉妹が相続人となることがありますが、兄弟姉妹には遺留分が認められておらず、遺留分侵害額請求権はありません。

遺留分の消滅時効(民法1048条)

遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び「遺留分」侵害があったことを知った時から1年で時効で消滅します。また、相続の開始から10年でも時効で消滅します。つまり、「遺留分」侵害の事実を知らないまま10年経過すると、その後に知ったとしても請求できないということです。1年という短期を定めたのは、法律関係の早期安定を図るためとされています。

・1年間の時効
相続の開始と遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知ったときから1年以内に請求しなければ、時効により消滅します。

・10年間の除斥期間
事由が発生したことを知らずにいたとしても、相続開始から10年経つと権利が消滅します。

とくに気を付けなければならないのは、この1年間の時効です。権利を行使した時点で時効を止められるので早めに相手方へ請求する意思を伝えましょう。1年以内に解決が見込めないようであれば、内容証明郵便で請求書を送ることで権利を行使した証拠を残すことができます。 

まとめ

相続人の「法定相続分」及び「遺留分」は前述のとおりであり、遺言を作成する際、相続人とそれぞれの遺留分に配慮することが大切です。

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