ペットは家族と考えている方にとって、自分の死後、ペットの世話が心配、ペットに財産を遺したいとの思いがあるかもしれません。
ペットに遺言は可能か
ペットは法律上「動産」とされ、結論として、ペットに対する「直接の遺言はできません」。ただ、遺言や信託契約などで上記の思いを達成することは可能です。
ペットの世話をしてくれる人に財産を遺し、管理などをしてもらいます。その方法として、以下の3つを提案します。
1. 負担付遺贈
2. 負担付死因贈与
3. ペット信託

1.負担付遺贈
負担付遺贈は、遺言により、財産を遺贈する代わりに一定の負担を負ってもらうものです。一般的には、ローンが残っている自宅を遺贈する場合などです。たとえば、3,000万円の価値のある自宅を遺贈しますが、残っている住宅ローン2,000万を負担してくださいというケースです。
ペットの世話を託したいとの目的を達成するため、一定の財産をペットの世話をしてくれる人に遺贈し、その代わりにペットの世話全般、その埋葬などの負担をしてもらいます。ペットは家族であると考えている本人にとっては世話をすることに大きな負担を感じないかもしれませんが、人によっては違うこともあります。また、世話をするペットの年齢、性格、健康状態などによっても違います。
生涯世話をする総費用は、大型犬は400万円、小型犬は300万円、猫は100万円程度かかる試算もあるようで、長年に渡って負担をお願いすることを考えると、これ以上を想定して遺贈する金額を決められうといいかもしれません。遺言を作成するにあたっては、ペットのためにどのようなことをすればいいか、好きなこと嫌いなことなど細かい内容を遺された方が良いと思います。また、遺言を確実に実行するため、遺言執行者を誰にするかも大切です。
遺贈のデメリット
遺贈は、受遺者側において自由に放棄できます。放棄しなかった場合であっても、財産だけ貰ってペットの世話などの負担を負わないことがありえます。そのため、ペットの世話などをお願いをしようとしている方と事前に話し合いをしておくことが大切です。また、信頼できる方を遺言執行者に指定しておきましょう。遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することとなり、受遺者が財産だけを貰って負担を負わない場合、遺言執行者においてその義務の履行を催告でき、仮に受遺者が応じなければ、遺言の無効を家庭裁判所に請求をできます。遺言執行者は、遺言の監視役と言えます。

遺留分
このような遺言であっても遺留分については注意すべきです。遺留分の詳細はこちらを参照ください。
ペットの世話などを引き受けてくれた方を自身の相続トラブルに巻き込んでしまうのは避けたいところです。自身の相続関係を確認し、遺留分に配慮した上で遺言書を作成することも重要なのです。
2.負担付死因贈与
負担付「遺贈」と負担付「死因贈与」は異なります。負担付「遺贈」は、事前の話合いはするにしても、遺言によって、一定の財産を渡しペットの世話などをしてもらう、一方的な意思表示(単独行為)です。一方、負担付「死因贈与」は、贈与者の死亡によって効力を生じる「贈与契約」です。贈与者(財産を渡す側)と受贈者(財産を貰う側)双方の合意が必須です。つまり、この2つの違いは、契約の有無です。
「遺贈」と異なり、「死因贈与」では贈与者の死亡時に既に贈与契約が「合意済の状態」であり、ペットの世話などの負担の履行がされない可能性は低いと言えます。この場合でも、誰に世話をお願いするかの人選は大事です。なお、「死因贈与」は遺言ではないので遺言執行者を定めることができない代わりに「執行者」を定めることができます。これは、「遺言」の場合の遺言執行者のような遺言の監視役と言えます。その他、遺留分などの問題点は、上記の負担付遺贈の場合と同様です。
3.ペット信託
ペット信託は、「信託」の仕組みを活用して、飼い主の入院、施設への入居、飼い主の死亡後に備えて、個人や法人等にお金を託して、ペットの世話をしてもらう方法です。「信託」は、自分の財産の一部、又は、全部を信頼できる人に託して、自分が決めた目的に沿って管理・運営してもらう制度です。
ペット信託の仕組み
ペット信託の場合、契約で次の3者を設定する必要があります。
・委託者:ペットの飼い主
・受託者:信託財産(金銭)を管理する者
・受益者:実際にペットを飼育する者 (受託者の管理する金銭を受領する者)
ペットの飼い主である「委託者」が、信託財産(金銭)を管理する「受託者」と実際にペットを飼育する「受益者」を選びます。この際、上記1、2の負担付「遺贈」や「死因贈与」と同様、受託者や受益者は信頼できる者の人選が大事です。信託を含めた「契約」は、契約時、ペットの飼い主である「委託者」に意思能力があることが必要ですので、認知症などのおそれもあるため早いうちに検討された方が良いと思います。
信託契約を締結する際、下記も設定しておきましょう。
・希望する飼育条件、好きなもの嫌いなものなど
・信託の終了時(ペットの死亡など信託契約の終了原因を設定しておきます)の残余財産の帰属権利者
ペット信託の費用
ペット信託は、概ね、次の費用がかかる想定しておいてください(各ケースによって変わります)。
・信託契約書作成料等の初期費用:25万円~
・飼育費(ペットフード代・獣医代・雑費)などの実費:年間25万~ ※犬種、年齢、性格、健康状態により異なる
ペット信託のメリット・デメリット
ペット信託のメリットとデメリットは下表のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 飼い主に万一があっても、ペットは受益者(や受託者)に世話をしてもらえる。 | ペットの飼い主である「委託者」の希望に合う「受託者」や「受益者」の人選が困難 |
| 受託者は、信託財産をペットのためにしか支出できない。 信託財産の利用状況のチェックに信託監督人をつけることができます。 | 初期費用や飼育費などが大型犬の場合、数百万円規模になることもあり、まとまった資金が必要 |
| 契約により飼い主である「委託者」の希望に近い飼育条件設定が可能 | 信託費用は一括で支払う必要がある。 |
| ペットの死亡などによりペット信託契約が終了する際、残った信託財産の処分方法を事前に指定しておくことができる。 | 遺留分を考慮した信託設計をするなど専門性が必要 |
まとめ
ペットに対して直接財産を遺すような遺言はできませんが、飼い主である自身の万が一に備え、上記1.~3.のような方法があります。
信託を含めた「契約」は、意思能力があることが必要であり、希望に合う「受託者」や「受益者」の世話などをしてくれる人選に時間がかかることもありえるため、早い段階で検討を始められても良いと思います。
ペット信託などの制度を使った事例の数は少ないため、当事務所においても知識・経験は浅いですが、専門家として一緒に最適な方法を検討し一助になりたいと考えています。検討しようと思われた際は、余裕をもって早い段階で当事務所にご相談ください。
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